
元風俗嬢が弁当屋で働く中で、さまざまな人間模様が繰り広げられる。セリフ以外にも表情や沈黙などによって心理描写しているので、見る人それぞれにそれぞれの印象を抱くことができる。小説のような印象を受けた。
風俗嬢との淡い恋
先日の辞書の旅でも取り上げたが、私は若いとき、風俗嬢に恋をしたことがある。
職業差別はいまだに残っている。風俗嬢となると世間的な目線も冷たい。同じ人間ではないと思っている人もいる。
私も最初、彼女に会うまでは、全く別の人種なのではないかと思っていた。しかし同じ人間だった。しかも普通の。
当時ナンバーワンだった彼女を指名して、腕枕だけして帰ったことがある。「今日は疲れているの」と胸元で言うから、「そっか、じゃあ今日は寝るだけでもいいよ」と頭を撫でたら、寝起きを立てていた。
それをファミレスで聞いた友人一同は、「風俗行って何もせずに帰ってくるとは、なんてバカなヤツだ」と爆笑した。「いや、帰り際にフレンチキスはした」と返したら、余計笑われた。私も一緒に笑った。
また、帰り際に彼女が「今日はごめんね」と言うから、「いいんだ。そういうんじゃないから」と格好つけて帰ってきたのを聞いて、一同は再度、腹を抱えて笑った。「男は粋じゃないとな」と私も一緒に笑った。
病気の親の治療費を稼ぐためだという話も、「嘘に決まっている。騙されるな」と一蹴された。しかし、彼女がそう言うなら、それを信じようと思っている。その方が楽だし、楽しい。基本的には信じたい。
おそらく彼女もこちらを嫌ってはいなかった。後日、ご飯の約束までは取りつけた。しかし結局、外では会えず仕舞いだったなあ。