映画『タイタニック』

佐藤嘉洋少年、高校3年時の大ヒット映画。上映期間中は一度だけでは飽き足らず、二度三度観に行くのが当たり前になっていたほど。

男子校生だった私は、ある日同級生のパイパニくん(拙著『1001のローキック』参照)のプリクラ手帳を見て小島瑠璃子似の女子が気になった。頼み込んでポケベルの番号を教えてもらい、ベル友に(ああ懐かしい呼び名)。ポケベルと電話のやり取りだけで1年間友情を育んでいた。

そしてついに会えることになり、タイタニックもこの子と映画館で観た。当時の私は月~土曜日まで名古屋JKファクトリーでキックボクシングの練習があった。しかも休みの日曜日は名古屋パルコ西館3Fのカフェ『マイミー』でウェイターをやっていた。得意技は皿洗い。

【朝倉店長には公私共々大変お世話になった。後ろはバイトの先輩の今井さん】

こじるり似の彼女は3回目のタイタニックだった。モテる女性にはライバルが多い。当たり前田のクラッカーである。人生は勝負の連続だ。勝ちに行け!

……

勝ちに行った結果、見事に数か月でフラれた。人生は勝負の連続であると同時に、反省の連続でもある。

さあ、どうでもいい私の与太話は置いておこう。タイタニックについて話さねば。

映画というのは見る度に感想が変わる。たっ2、3時間の間に壮大な物語を詰め込んでいるのだから当然だ。今回は「仕事」と「恋愛」について考えさせられた。

仕事について

まずは仕事。船が沈没する寸前まで楽器を演奏し続けた音楽家たち。早く逃げたい気持ちを抑えて客を脱出ボートに案内していた船員たち。沈没寸前まで説教を唱えて不安な人たちの心を沈めようとした牧師。過酷な状況下においても、自分の役割を全うし責任を果たそうとするプロの姿勢。

「無駄死にだ」とか「死んだら何の意味もない」という気持ちも、ある程度はわかる。「生きてこそ」という気持ちはもちろん自分にもある。けれども私は、人生において大きな比重を占める「仕事」に対して誇りを持っていたい。誇りとは人の役に立てるかどうかである。誇りを持って仕事している人たちは皆美しい。

仕事…〔「為事(シゴト)」の意〕からだや頭を使って、△働く(しなければならない事をする)こと。〔狭義では、その人の職業を指す〕

新明解国語辞典第8版

仕事…①しなければならないこと。働くべきこと。②収入を得るための勤め。職業。

明鏡国語辞典第3版

「しなければならない」というと強制的な感じも受ける(日本国憲法には労働の義務があるので当然と言えば当然)が、「仕事をしなければならない」からこそ責任も生まれるのではないだろうか。

恋愛について

まさに新明解国語辞典における恋愛の語釈を地で行くような二人の燃え上がる愛情だった。

恋愛…特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。

新明解国語辞典第7版

二人の置かれた立場の違いが恋愛感情をより燃え上がらせたか。恋愛は障壁があるほど燃える。長続きするかどうかは別として。

タイタニックの場合、「ジャックの死」という覆すことのできない障壁によって、ローズの心奥深くでこの恋愛は生き続けていたのだろう。

それでは、ジャックを心に秘めながら結婚生活を送られたローズの夫の気持ちはどうなるのか(笑)

しかしながら私の意見としては、ローズは一切口外せずに暮らしてきたのだから問題ない。浮気といえば浮気だけれど、「別にいいんじゃない」とも思う。できれば1番が良いが、好きな人が自分を好きなら、私は2番でも3番でも別にいいやと思ってしまう。いかれてますかね(笑)?

前だけを見て生きるのは刹那的であり、自分なら途中で息切れしてしまう。「思い出は 人生にとって 一番大切なものなのさ」と、ガガガSPのコザック前田さんも歌っている。

過ぎ去った日々はもう二度と戻ってこない。だからせめて、自分が歩んできた道で連れ添った人やその心を、時に振り返って思い出したい。そして前を見て生きる。前だけを見るのではなく。

明るく生こまい
佐藤嘉洋