夢は蜃気楼説〜夢は叶わなくてもいい〜

投稿日 2015年5月19日
更新日 2023年3月1日
著者佐藤嘉洋

こんばんは。JKFマネジャーの佐藤嘉洋です。先日はたくさんの応援ありがとうございました。ベストに仕上げ、ベストを尽くしましたが、結果は２ラウンドTKO負け。2015年1月に続き、2連続KO負けを喫してしまいました。

本来ならここで快勝し、7月のK-1世界トーナメントに出場するはずでしたが、自分自身の脳みそのダメージの蓄積を鑑みて辞退することにしました。

人生はだいたい思い通りにいきますが、たまにはうまくいかないと思うときもあります。でも、今の自分の状態も、ある意味では自分が思い描いた自分なんです。だから、必要以上に落ち込んではいません。私は明るく生きています。ご安心を。トーナメント辞退の挨拶文は、こちらに載せていますのでご参考に。
K-1のトーナメント出場に関して（佐藤嘉洋オフィシャルブログ）

愚直に取り組んでいると一人また一人と……

1998年プロデビューしてから、試合感覚を半年以上開けることはなく、17年間歩みを止めずに突っ走って来れたことは、自分の中でも大きな誇りです。

力を維持したまま100戦を駆け抜ける、という壮大な夢からは遠ざかりましたが、かなりのところまで到達することができました。だから、今回の「長期休養」という選択に関しては、後悔がまったくない訳ではありませんが、スッキリしているところもあるんです。この位置が、とりあえずの限界でした。

限界の壁なんていうのは、自分自身が作っているものだということは重々承知しています。
ただ、私は、

どんなけ限界の壁を越えないかんねん！
どんなけ己を強くしないかんねん！
充分過ぎるくらいがんばったやん！

と、名古屋人のくせに大阪弁になってしまうわけであります。

これは2010年のＫ−１世界トーナメントでのPVです。この中で私は、

夢は叶わなくてもいい

そう言っているんです。

なんだよ、それ！！

とガッカリする方もいらっしゃるかと思います。ええ、確かにそうです。もちろん、夢は叶った方がいいです。しかしですね、夢というのは蜃気楼のように逃げていくモノ、だと私は感じています。この「夢は蜃気楼説」、どういうことか説明すると……。

仮にあなたの体重が１００kgだっとしましょう。
たとえば身長１７０cmだったなら、かなり太っている状態だといえます。

この体重を７０kgまで絞りたい

そんな夢を見たとしましょう。これね、たぶん75kgくらいまで落として夢の達成が見えて来た段階で、もう70kgまで絞ることは夢ではなくなっているんです。この頃には、あなたは次の新しい夢を見ています（蜃気楼のように遠ざかっている）。

たとえば「腹筋を6つに割ろう」だとか、「股割りができるようになろう」だとか、そんな新しい夢を見ているはずです。向上心のある人というのは、そういうことなんです。

夢は近づくと蜃気楼のように消え、夢「だった」場所は目標になる。
そしてまた、新しい夢が遠くでゆらゆらと浮かび上がる。

これが、「夢は蜃気楼説」です。だから、体重を70kgにしたいのであれば、「60kgまで落とす」くらいの夢を思い描くべきです。1億円手に入れたいのなら、「3億円手に入れる」くらいの夢を思い描くべきです。

バカにされてもいいんです！！
愚直に取り組んでみましょう！！

だんだんと、バカにする人は一人、また一人といなくなり、一人、また一人と協力者が現れます。的確な方向（才能の見極め）への努力と工夫の積み重ねは、徐々に着実に結果が出てくるはず。

（※「才能の見極め」についても面白い話があります。それはまた違う機会に）

挫折への対処法

大きな夢を描いていると、途中で夢を諦めることがあります。世間ではそれを、挫折と呼びます。100戦という途方もない夢を一気に駆け抜けることはできなかったけれども、私は一切腐ってはおりません。なぜなら、80戦もやれば、もう十分じゃないか、という気持ちにもなれたから。いざ歩みを止めて振り返ってみたら、満足感のある自分もいたんです。

過去を振り返るな、後ろを見るな

と、自己啓発書や前向きソングの歌からは、そんな文章や歌詞が流れてきます。しかし私は、たまには歩んできた道を振り返ることをオススメします。それは全然悪いことじゃない。そもそも到達不可能と思える大きな夢を描いているんですから、うまくいかなくて当然なんです。歩んできた道を振り返ってみてください。

ええ！？知らない間に、自分はこんなにもがんばってきたのか！！

と、驚くことがあるはずです。何度も繰り返しますが、目標を達成するためには、その先にある大きな夢を描いておくことが重要なんです。だからもし、夢を挫折してしまったときには、過去を振り返って自分の歩んできた道を確認して、ある程度は納得し、腐らずに前を向きましょう。

夢を実現させるために、全力で努力し、工夫し、感じたことは大きな財産です。挫折したからといって、腐って元の位置に、あるいは、もっと良くない方へ転がってしまうのが正真正銘、本物の挫折です。私はそんなのイヤですからね。

夢は叶わなくてもいい

私はね、幸せになりたいんです。夢を叶えた瞬間しか幸せを感じられず、またさらに新しい夢を作って、さらに追い求めていては、キリがないんです。つまり、

夢を追い求めている間に、自分を追い詰めてしまいます。

どこかの地点で妥協するのがいいんです。だから「夢」と「お金持ち」と「結婚」は少し似たところがあるのかもしれないなあ、と考えています。これらはあくまで「幸せになる」ための手段であって目的ではないんです。夢を追っていく者として伝えたいことは、

妥協と追求のバランスをいかにするか

ということです。夢に向かって努力すらできない人間が妥協したって何も実現できません。この段階の人はまず、なんでもいいから実現できる小さな目標を達成し、その喜びを快感に感じることで、さらに大きな目標を到達できるようにしましょう。

そのためにも、到達不可能と思われる大きな夢を描いておくことです。知らない間に、目標を達成しているはずです。夢を挫折したときには、その手前にある目標が達成できたのかどうか、を必ず確認しましょう。腐っている暇はありませんよ。

……うーん、でも、ちょっと待てよ……

今の私はちょうど、夢と目標の狭間を行ったり来たりしているところなんです。「ここまでやってきたから充分だろう」という気持ちと、「よっしゃ、111戦のゾロ目まで試合をしたろうかしらん」という気持ちです。それが今回負けて、「力を維持したまま100戦を駆け抜ける」というのは、目標ではなく夢になって遠ざかったわけなんですけどね。

とりあえず今しばらくは、ゆっくりと身体を休めたいと思います。しかしながら上の動画で私は、夢は叶わなくてもいい、としながら、

「僕は何かしらの夢を見続けていく。夢を見続けながら死んでいけばいい。そうすれば、幸せな人生だったなって思えるはずだから」

と語っています。確かにそうだなあ。もしキックボクサーとしての夢を諦めたとしても、私はきっと何かしらの夢を見ることになるでしょう。妥協しとけや、と言っておきながら、私はきっと夢を見てしまうんだろうなあ……