鼻で深く吸って口で吐く呼吸法【 強制鼻呼吸 】

JKFの皆さん、こんばんは。中距離走〜マラソンなどを経験された方は身についている方もいらっしゃると思いますが、今月はスタミナが伸びる呼吸法について説明します。

結論から言うと、鼻で深く吸って口で吐く呼吸法です。私は強制鼻呼吸と名付けています。

過去の敗戦から編み出した

人は心肺的に疲れてくると、本能的に口呼吸になります。口で吸った方が酸素を吸う量が瞬間的には多く楽に感じるからです。しかし、口呼吸では深く吸えません。この場合の本能には従わない方がいいです。

2009年4月の試合で。私は試合中盤から口呼吸を繰り返して酸欠になり、最終R~延長戦で身体が全く動かなくなる事態に陥(おちい)りました。優勝候補として期待されながら、世界トーナメント初戦敗退。世間に恥を晒(さら)した試合です。

【2009年ドラゴ戦の敗戦(2010年にリベンジ)】

被害妄想ですが、道行く人たち全員からバカにされたような気になりました。ただし、俯いたままでは何一つ進展はありません。次こそは勝つため、旅行や遊びで気分転換を図り、一週間後には練習を再開しました。気持ちは落ち込んだままでしたが、無理やりにでも身体を動かせば多少は気も紛れます。自分を良い意味で洗脳するといいです。失敗して落ち込むのは3日まで、と自分で決めております。反省と落胆は違います。

強制鼻呼吸のやり方

この試合を繰り返し見て反省しました。己の惨めな現実を目に焼き付け、原動力に変えました。負の感情は、すべてやる気に変えられます。そして今はこの負けに感謝しています。キックボクシングだけでなく、日常にも役立つ呼吸法を編み出せたのですから。

試合映像を見比べ、この極端なパフォーマンス低下は、口呼吸が原因だと予測を立て、自分の身体で人体実験を開始しました。

まず、

①本能に任せて口呼吸する
②鼻呼吸を徹底する
③口呼吸と鼻呼吸を織り交ぜる


と3つのケースに分けて練習しました。

結局、口で吸おうが鼻で吸おうがキツイものはキツイことがわかりました。どっちみちキツイなら、早く回復する鼻呼吸の方がいいですよね。本能に抗(あらが)って無理やり鼻で呼吸してしまうんです。そうすると、口呼吸よりも鼻呼吸の方が、復帰は早いです。

②は辛すぎるのと、究極地点のラッシュは呼吸どころではないので、③が一番パフォーマンスが上がることがわかりました。

たとえばインターバル中の呼吸。R終了直後の呼吸から徹底すると辛すぎますから、5回くらいは口でゼエゼエと呼吸してもいいです。しかしそのあとは意識的にがんばって強制鼻呼吸に変えてみましょう。鼻で深く空気を吸い込むんです。

蛇足ですが、ゼエゼエするとパニックになりやすいです。あれ、怖いですよ! 私は上のドラゴ戦でなりました。パニックといっても発狂して暴れ回るわけじゃありません。私も勘違いしていましたが(笑)

それでは実際に鼻呼吸を体感してみましょう。椅子に座って鼻呼吸で深く吸い込んでみてください。腹の底まで酸素が行き渡る感覚を掴んでほしいです。そしてその息を、腹の底から「ふ〜うっ!」と口から息を吐き出してみましょう。

心も落ち着きます。

ラウンド中に深い呼吸は難しいので、攻撃の合間に鼻で吸って口で吐く、というのを意識するだけで大丈夫です。

次戦は延長で勝利!

しっかり反省して臨んだ3ヶ月後の次戦は、豈図(あにはか)らんや屈辱の敗戦と同様、延長戦にもつれ込む大接戦。しかし私は強制鼻呼吸のおかげで、ギリギリの判定勝ちを収めたのでした。

地上波TVではカットされてしまった試合ですが、自分の中では大きな勝利となりました。また、このユーリ・メスという選手が良い選手なんです。

インターバル中、会長のタオルで口を押さえて口呼吸で何度かもがき、強制鼻呼吸に移行している自分がいます。相手も強い上に、試合も激しい攻防が続きましたから、強制鼻呼吸は辛かったなあ(笑)

強制鼻呼吸のおかげでしょう。あれから二度と酸欠で身体が動かなくなることはなくなりました。運動において、呼吸もまた大切な要素です。ぜひインターバルの中盤くらいからは強制鼻呼吸に移行し、1秒でも早く息を整えましょう。

明るく生こまい
佐藤嘉洋

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